考察「アイマス2はギャルゲーなのか?」

January 05, 2013 / コラム


ホット蒸気で、はじめてのアイマス!

皆様あけましておめでとうございます!今はおせちと雑煮を一通り食べ終え、C83の戦利品を堪能し始めているところでしょうか。
自分はというと、ようやく一作品を作り終えたごほうび代わりに、今まで積みっぱなしになっていたPS3版「アイドルマスター2」をちょっとずつプレイしている最中です。
(この1年くらいゲーム機を封印していました。おお…ほこりが…)

で、


キャラ選択画面でいきなり詰まっています。

こりゃあ何故なんでしょう…?今回は、アイマス2のゲーム的な作りについて考察していきます。

アイマス2の攻略対象キャラ9人をAC版アイドルマスターと比較すると

●伊織(ツンデレお嬢様)
●あずさ(あらあらお姉さん)
●亜美真美(双子)
●律子(メガネ委員長)

というギャルゲーとしては非常に目立った記号を持つキャラが攻略非対象になってしまっており、「明るく元気」なキャラが9人中6人もいる構造になっています。替えのきかない記号を持っているキャラクターが、千早・雪歩・貴音しかいないのです。
暴論ではありますが、よくあるギャルゲー企画書の場合、

●春香・やよい(快活/垢抜けない枠)
●真美・美希(小悪魔/不真面目枠)
●響・真(スポーツ/ボーイッシュ枠)

この6人はそれぞれ枠別に統合され、3キャラにまで減らされるはずです。
その二人が1キャラで纏められるわけないだろアホ!そもそも攻略対象って視点がおかしいから!アイマスはギャルゲーじゃねえ!(モンスターファームだ!)という意見には自分も首肯するばかりなのですが、それは多分、事前知識がある人の言い分。
「大家族」「貧乏」「沖縄」「ペット」といった要素は、やよいや響の性格ではなく「環境」です。春香が貧乏になることだってあるし、真がペットを飼う事だってある。環境要因はやよいや響の人格説明、キャラ付けの要素としては機能しません。出来事のきっかけ、イベントフラグになるだけです。

ここで、アイマス2の公式ページにあるキャラクター紹介文を見てみましょう。



 


やばい やばいぞ

明るいとか元気とか使いすぎじゃないですかね…!?
全く異なるキャラ記号を持つ女の子達の中から3人選ぶというだけでも一仕事なはずなのに、これ、「明るく元気」系のキャラにピンとこない初見プレイヤーがアイマス2の攻略対象9人の中から3人も選ぶのは、相当苦しいんじゃないでしょうか。
もちろんプレイしていくにつれ、6人が「明るく元気」なんて一単語で括れる存在でない事は十分に分かってくるのですが、それがプレイ前に分からないと、キャラ紹介としてはまずいはずです。

個人的には亜美真美が一番好きなんですが、ロリ・双子という要素を両方とも失った真美の情報が美希に対して足りなさすぎます。アイマスの事前知識が全くない人(パッと見の属性以外にキャラの選択材料を持たない人)が「美希をスルーして真美をユニットに入れる」確率はかなり低いはず。
間違っても真美を削れなんて話ではなく、初見プレイヤーが双海真美を選ぶに足るだけの理由を提案し切れていないような気がするため、何とも惜しい気持ちになってしまうのです。いや美希も好きだし、亜美真美に人気キャラになってほしいわけでもありませんが…(ブツブツ)

この文面は、初見プレイヤーに真美の情報をほとんど与えてくれません。

「今までデュオだったこと」
「姉か妹がいること(※双子とすら書かれていない)」
「自称努力家、癒し系であること」

この三つが、真美のキャラ紹介から読み取れる内容でしょう。
これは明らかに既存のファン、つまり無印アイマスでは亜美真美が個別にプロデュースできなかった事を知っているファンに向けての文章ですが、既存ファン向けの文章をキャラ紹介にする≒既存ファンの囲い込みを狙う作品作りを行うのであれば、竜宮組は攻略非対象にしちゃまずいはずです。



ここで、アニメ「アイドルマスター」を引き合いに。
千早が春香に助けられ、春香が自力で立ち直る所を見ても、アニマスは男、つまりプロデューサーの見せ場が徹底して排除されています。
「ハーレムアニメ」ではなく「ガールズアニメ」、この主軸を揺るがせにしなかった事が、アニマスが名作足りえた理由でしょう。

24話、苦しむ春香の前に颯爽と現れたのが仙豆によって全快したプロデューサーであったなら、男性に感情移入する我々は相応のカタルシスを得られたはずです。しかし、それではアニマスを貫く「ガールズアニメ」としての軸がめちゃくちゃになってしまいます。
3話の雪歩(いえーい!)、
10話のやよい(運動会)、
20話の千早(ほっとかないよ!)、
いずれのトラブルに際してもアニマスのプロデューサーは「マイナス要因を取り除く」行動のみに終始しています。プラスマイナスゼロに戻った場の中でプラスへの一歩を踏み出しているのは、必ずアイドル達の意思によるものです。
作品のテーマ上、プロデューサーが春香を助けるわけにはいかなかったのです。

どんな作品を作るのか?どんなテーマを伝えたいのか?
これらに対する終始一貫した高い制作意識の持ちようという点において、アニマスは近年まれに見る傑作だったと思っています。



閑話休題。
ミクロ視点ではいくつもの輝かしい要素を持ち、また非常に華のあるゲームである「アイドルマスター2」、これをマクロ視点で一つの作品として見てみると、所々にほころびが見えてきます。

★1:9C3=84通りに及ぶメンバーの選び方とそれを支える膨大な会話パターン、とんでもない数が用意してあるお守り・衣装など、システムは明らかに周回プレイを見越した作りなのだが、竜宮・ジュピター絡みのイベント、必敗イベント等が全キャラ共通なのでシナリオは一本道の作りに見えがちであり、周回プレイがかなり辛い。システムとシナリオが噛み合っていない。

★2:初見プレイヤーに対する訴求力としては攻略対象9人の属性が被りすぎており、既存プレイヤーの囲い込みを狙うには竜宮組をプロデュースできないのが痛すぎる。ジュピターの扱い(ファーストインプレッションさえ間違えなければ、彼らは心から愛せる良キャラです)も含め、主要購買層が絞りきれていない。

★3:ギャルゲーとしては物語性・恋愛要素が薄く、音ゲー・戦略ゲーとしてはシナリオのすごろくに「ここで必ず止まる」マスが多すぎるせいでプレイングのテンポが悪い。ゲームとしてのコンセプトが散らばりすぎている。

とにかく「迷い」が多い。
ナンバリングタイトル制作という重責、そのディレクターの苦悩が目に浮かぶようです。
上述の構成の粗さは、アイマス2を「ギャルゲー」として作るのか、アニマスのような「ガールズサクセスゲー」として作るのか、スタンスを一貫できなかったところから来ているのかもしれません。



恐らく「初作と同じフォーマットで続編を作ったら、ジャンルは衰退していくしかない」という判断の下、挑戦的な試みを多数盛り込んだアイマス2は評価に値するゲームであると思っています。
AC・無印・2が全く別のゲームであるというのは非常に意義深い。今もなお、AC版アイマスも無印アイマスも、その商品価値を失っていないわけです。

話が飛ぶようですが、僕、サクラ大戦2をプレイした時に「すみれが最初からデレてる」事がすげーショックだったんですよ。
大神さんはサクラ大戦1を終えた時点で救国の英雄だし、キャラ全員に惚れられまくってるし、もうやる事がなかった。アイマス2の制作側が危惧していたのは、たぶん、そういうことなんだと思います。
過去作の焼き直しに留まらない、新たな要素を盛り込もうとする姿勢は、同じく制作に携わる人間として真に尊敬すべきところです。

アイマス2への正直な感想は「もったいない」なんですよ!
キャラは超可愛いの!会話パターンや収録曲の多さも特筆に価するレベルですし、コミュやライブのシステムなど、ゲームとして見るべき点も多々ある!
それにキャラが超可愛いし、何よりキャラが超可愛い!!!
だけど、それらの要素が噛み合ってないんですよ!楽しめるんだけど、なんかすっきりしないの!
こっちはアイマス大好きなんですよ!

アイマス2は、今後のアイマス展開の礎として非常に重要な、有意義な作品であると思います。
ただ、作品単体でみるとちょっと作りの粗い点が多い。
その端々に見られた粗さと迷いを洗練させた上でアイマス3が出てくれれば、今度こそ自分は諸手を挙げて、アイマスを人に勧められるはずです。

モバマスが飛ぶ鳥落とす勢いの今、アイマス3を開発するという経営判断が下されることは有り得るのでしょうか…?
いや、正式ナンバリングタイトルはアイマスのブランディングに必要だと思うのできっと大丈夫!と信じたいところ!



ところで、アイマス3DSはまだですかね…?
DSがアイマスのゲームの中で一番好きなんですが!バッドエンドまで本当に考えさせられる展開で、シナリオはアイマスのゲームの中でも群を抜いて良く出来ていたと思います。
あまりにシナリオが良く出来ていたからこそ、もう続編が作れないってのはあると思いますが…!そこをなんとか…!

今後のアイマスの展開に、更に期待したいところです。

(終)