オタクへの憧れ

December 31, 2014 / その他

ご無沙汰しております、赤りんごです。

コミックマーケット87に参加された皆様、本当にお疲れ様でした。
自分は、今回は数年ぶりにサークルチケットでの参加ではなく、一般参加者として29日・30日の両日に参加させて頂きました。

サークルとして参加しているとなかなか挨拶回りに出られるものではなく、また来てくれた方に直接本を手渡す事を自身の旨としているため、ここ数年のコミケではずっとスペースを離れられないような状態が続いていました。
そんなわけで、静養中の今こそ逆にチャンス!と意気込みながら全力で挨拶回りをしていた次第です。
数年来の友人たちに数年前の本を渡すというようなひとりウラシマ状態で会場を巡り、すれ違ってしまったり既に帰ってしまっていたりで旧知の方のスペース全てを回り切ることはできなかったのですが、それでも非常に充実感のあるコミケだったな、と今は満足しています。



同日に参加された方はご存知かと思いますが、二日目である29日は会場に雨が降ってしまいました。
今年の参加者数は過去最大の56万人にも及んだようで、これだけの人数が雨の影響を受けるとただでさえ過酷な状況が余計にまずい具合となります。
足元は悪く、水に弱い紙を守る事を考えねばならず、傘を指す人が多ければ列導線にも予期せぬ事態が発生し…

しかしそれでも、会場の熱気が変わるものではありません。
参加者は雨の中静かに元気よく(?)行列を作り、極寒の中半袖の服を着てコスプレをし、友人知人との交流に精を出していました。

天候に恵まれないコミケは自分も参加していた2012年冬以来のはずであり、雨に濡れた会場を歩きながら、その時のことをちょっと思い出していました。
自分には2012年ほどの大雨はそれまで経験がなく、不安を抱えて開場を迎えたのですが、それでも列を作ってファンの方が待ってくれていたのです。
頭からつま先までびしょ濡れになり、寒さに震える手でお金を出しながら、それでもサークル参加者の自分に「これからも頑張ってください」と声を掛けてくれるのです。

好きの一念で、自分にこれができるだろうか?
サークルとして参加した2012年、そして一般で参加した今回、考える事は奇しくも同じでした。



オタクが好きなものを愛する気持ちは常に熱く、真っ直ぐです。
僕自身は二十歳を過ぎるまでオタクコンテンツとはまるで接点がなく、イラストを描き始めたのも最初はデザインのアルバイトのおまけ程度であり、この職業について尚、最近のアニメやゲームをあまり知りません。
(帰宅するとすぐ音楽をかけてしまうので、そもそもテレビをつける習慣がないんですよね…)

自分がこの業界を選んだのはオタクコンテンツに憧れたためではなく、オタクそのものに憧れたためです。

彼らは斜に構えません。
ギャルゲーをプレイして本気で泣き、アニメを見て本気で議論し、漫画を読んで本気で笑います。
子供のようなその振る舞いはしかし、作家にとって何よりも心を打つ反応です。
我々のような年齢の人間が同窓会などに行くと、ついつい仕事や子育ての苦労・親の介護など、暗めの話を共有してしまいがちなのですが、彼らは常に前を向いて「今好きなもの」の話題を共有しています。

自分がプロのイラストレーターを名乗る身になったのは偶然なのですが、そうあり続けたいと願っているのは偶然ではありません。
この圧倒的な前向きのエネルギーを持つ人達と一緒に仕事をしていれば必ず何か面白いことが起きるだろう、という確信があります。



ここ最近はSNSはおろかネットの話題にも疎くなってしまっており、新刊のみならず最近描いた絵すらないような有り様でコミケに参加するのは躊躇する所が大きかったのですが、今は参加して本当に良かったと感じています。
買い物に挨拶に勤しむオタク達の姿には、20万もの人が閉場を三三七拍子で締め「良いお年を!」と声をかける姿には、やはり自分はコミケとオタクが大好きなのだな、と再確認させてくれるだけの熱がありました。

何の拍子か今年のコミケ最終日は12月30日、今年が終わるにはまだ今日の一日を残していますので、ちょっとこれから秋葉原へ向かいたいと思います。
新年を迎えるための買い物がいくつかあるとはいえ、それをコミケ四日目の死地と化した秋葉原で済ませる必要などまったくないのですが…

今日の日をオタクと一緒に過ごしたいな、と思っています。



皆様にご迷惑・ご心配をお掛けし、絵の一枚も発表できないまま今年を終える自分がおめおめとネット上に顔を見せるのは厚顔の極みですが、一つ区切りの、年の瀬のご挨拶を兼ねてブログを更新させて頂きました。

語れるような内容を備えたものを年内に形に出来なかったのは、自身にとっても痛恨の極みです。
次回こそは必殺の作品を携えてこのブログを更新できるよう、精進致します。
それまでにはもうちょっとだけ時間を頂いてしまうかもしれませんが…



それでは皆様、良いお年をお迎えください。
オタクすごいよ。オタクかっこいいよ。ほんとに。

赤りんご